●水谷民奈先生(静岡健生会 浜松佐藤町診療所 所長)

私は2006年から現在の診療所に赴任し、2013年に日本プライマリ・ケア連合学会認定医を取得しました。それ以外には特に資格もなく、日々子育てに忙しかったのですが、家庭医・総合診療医への憧れが募り、何とかならないかと悩んでいた時に、CFMDの遠隔型指導医フェローシップを知りました。実際の学習内容は、家庭医療学そのものではなく、教育デザインやQIや経営戦略など、さらに一歩先を行くものだったのは、応募してから知りました。しかし、2021年より診療所の所長に就任して、このフェローシップの経験が大きな財産になっていると実感しています。

教育にデザインがあるということから、まさに目から鱗。今まで自分自身が受けてきた教育は何だったのか…と愕然とした気持ちになりつつ、これから職場のスタッフや研修医・医学生を指導するには、自分自身が変わらなければいけないと痛感しました。井上真智子先生から声を掛けていただき、2018年から浜松医科大学の医学概論の講義を1枠受け持っていますが、この経験を生かして双方向性の授業を心がけています。自分で言うのもおかしいのですが、なかなか好評のようです(!?)。

経営やマネジメントについては、本当に何もわかっていなかったことがわかりました。戦略の立て方について講義を受けて、自分の診療所が生き残るために何が必要かを考えることができました。また、組織が成熟するまでの過程を学び、その中でリーダーはどのような役割を果たすべきかを学ぶことができました。この学びは、今現在診療所所長となって、非常に役立っていると感じています。

何よりも、“井の中の蛙大海を知らず”だった私のような者を温かく迎え入れていただいたCFMDの指導医の先生方に本当に感謝しております。様々な事情でなかなか一歩を踏み出せない方に、このフェローシップをお勧めしたいと思います。

 

 

●森川暢先生(市立奈良病院総合診療科)

私は医師14年目の総合診療医だが、CFMDの指導医養成フェローシップに応募したのは医師8年目であった。当時、まだ若手ながら総合診療科において科長のような役割をしており、そのためにもマネジメントを学び直したいというのが志望の動機であった。フェローシップでは、質改善、教育デザイン、チームビルディングに加えて、経営についても扱っているのが特徴的であった。質改善ではPDCAという概念は知っていたもののどのように実践に落とし込めばよいかということも分からなかった。しかし、実際の質改善の取り組みを通して指導医にフィードバックをいただくことで質改善が徐々に実践できるようになった。教育デザインに関しても後輩にレクチャーをする機会はもともと多いほうであったが、系統的に教育のデザインをすることを学んだのは本フェローシップがはじめてであった。今でも教育デザインで習った手法を活用している。チームビルディングでは質改善とからめて、多職種連携チームをどのように作り上げるかという基礎を学んだ。現在、多職種連携向けの誤嚥性肺炎の教育プログラムを運営しているが、その際のノウハウが役になっていることは言うまでもない。また本フェローシップのユニークなところはバランスシートの読み方などの経営に関する実践的な知識を扱うのみならず、自施設における経営戦略の立案というMBAで扱うような項目についても学べる点である。これは、他のフェローシップではあまりないように感じる。1年のフェローシップは長く感じるかもしれないが、質改善、教育デザイン、チームビルディング、経営における自施設の課題を決定し、それを解決するために勉強しつつフィードバックを指導医にいただきつつ、実践をしていれば1年間はすぐに過ぎ去った。フェローシップの修了式は感無量であった。特に後期研修医が終わり、指導医になろうとしている若手の医師にとっては本フェローシップで扱うスキルは必須である。本フェローシップは家庭医や在宅医には有用であることは間違いないが、私のような病院総合医/総合内科医にとっても指導医となるために非常に有意義であると、自信をもって推薦できるものである。